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シルバ

Author:シルバ
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ちなみに相互リンク歓迎ですので、コメント欄またはWeb拍手に何か残していただければすぐに貼りますよぉ~!でも、エッチなのはダメだと思います!

あ~でも管理人が認めたのはおけ!(それ、なんてわがまま?


涼宮ハルヒss完結物

こちらはサブタイトル付です
「SOME DAY IN THE SNOW」

喜緑江美里の教育


朝倉涼子の憧夢~IN THE LOVERS POINT~

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風と花と喜緑江美里の心

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「閃光の原点~想~」






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DATE: CATEGORY:デイ・オレンジ・ハート
夕日が照り
    
    世界がオレンジ色に包まれる


そんな世界で君を見て
  
    あなたを思う、『わたし』は 俺が受験とやらのための戦争部隊育成場で勉強をし、ようやく定時の時間が過ぎた頃だ。

「ふぅ、今日もようやく終わりそうだな・・・」
まったく持って疲れるもんだな、何でこう何時間も缶詰にされていなきゃならんのだろうね。さすがに締め切り間近の小説家や漫画家の気持ちはわからんが、机に向かいながら只ひたすらペンを走らせていると、後ろから担当が「原稿まだですか?」と聞かれそうなぐらいに追い詰められている気分だ。

「何をそんなにため息をついているんだい」
ほら、俺のある意味担当と言ってもいいやつが来てしまった。しかもこの担当かなり口うるさいときたもんだ。

「キョン、君の考えていることはだいたいわかるよ。何時間も同じ姿勢で座って更にほとんど変わらないような速さででペンを参考書という学生にとってはまさに嫌いな、いや目を背けたくなるものベスト3に選ばれるかもしれないモノと対峙しているんだからね。僕はまだしもキョンのように常に勉学に励んでいないと軽い5月病みたいな状態になるだろうね」

まったく、無駄に長い単語やらわけのわからん言葉をならべてきやがった。いっとくけど俺は佐々木ほど博識でもないからな、嫌味とも聞こえないような言葉を言われても無意味だぞ。

「嫌味ってわかっていてくれているからキョンはありがたいね、ナンセンスな人間だったら意味がわからず関心も持ってくれないからね」

興趣を抑えるような微笑み方だが、言葉の上だけで佐々木の口調には嫌味なんてなかったのだが、なんだろうな動物園の檻にいれられているライオンやホワイトタイガーはこんな気分になるんだろうか、どこなく面白がられているというか・・・。

「それよりもキョン、憂鬱な気分は早く消失してしまった方がいいよ。受験勉強の障害になるからね」
「そんなことは言ってもだな、戦場に向かう前に入った独房のような雰囲気の場所にいたらだな、誰だって気が滅入るしな、更にそこでレポートを書いているようなもんだぞ」
うん、佐々木の癖がうつちまったみたいだな、いや、でもこれはこれで楽しいかもな。
「キョン、それは意味がわからないが、いやなんとなく言いたいことは伝わっているがね」
それはお前に言われなきゃならんことなのか?他の連中に聞いてみろ同じ事を言われるぞ。

「お前はいいよな、タフというか堅牢というか・・・」
やれやれと言いつつ、佐々木の方を見たが・・・おう、結構不機嫌な目で見てらっしゃるぞ、俺はちらりとデパートで買った安物のノンブランドの時計を見た、少々時間を気にしなくてはならないかな。

「キョン、君はデリカシーというのモノが欠けている、いや欠落しているって言われたことあるだろう。第一だね僕にだって・・・・」
これから延々と小言を聞かされのかと覚悟していたが、なぜか佐々木は途中で言葉をストップしなにやらぶつぶつと独りを言い出した。

ちなみに言うとだなこいつの小言は本当に長い、つまらない授業を午後のまさに睡眠に適した温度で聞かされているようで、いつ終わるのか1分の間に5回秒針が回っているのではないかと思うぐらいの時計をちらちらと見ながらいつ終わってくれるのか待っている気分にさせてくれる。

「しかし、いや・・・でも・・・これも、一興かも・・・」
何を悩んでいるかはわからんが考えているということだけはわかる。しかも立ち上がれないようにご丁寧に俺の肩に手を置き、完全に『逃げるな』という力具合で押さえつけている。

「おい、佐々木・・・」
ひとまず肩に置いてある手をどけてくれないか、そしてすぐさまここから逃げて行きたいんだがと言おうとしたが・・・。

「キョン、ちょっと付いてきたまえ」
そんな言葉にさえぎられてしまった。俺の言葉はどうやら耳には入ってくれてないようだな、やれやれ。




「で、ここは何処だ・・・」
あからさまな人工物の灯火がそろそろ灯ってくるような時間帯に着いたのは、日曜日にお父さんが家族サービスで連れて行ったのはいいが結局疲れ果てて近くのベンチで眠りに落ちてしまいそうなランキング1位に燦然と輝く場所だった。

「ここかい?キョンは常識を知っている人間だと思っていたけど、こんな小学生でも知っているような所を知らなかったとは意外というか・・・」

わかってるさ、わかってるからこそ聞きたくなる場所だろうね。
「ちがう・・・そんな意味で聞いてはいないだろうが」
ちなみに、初デートに言ったら別れるとか何とか言う場所でもあったな。

あれは、あながちモテない人間や雑誌の嘘情報でもないようだな。ここで解説してもいいが、それはそれでまったく別物になってしまうから止めておこう。で・・・・
「何で俺とお前は遊園地にいるのかと聞いているんだが・・・」

「理由かい?言ってなかったかな」
ああ、まず聞いていないね。お前について来いといわれて半ば強制的に手を引かれて、そばの駅に乗って、あげくの果てにいつの間にか電車賃やら入場料が財布から消えてなくなっていたのに気づいたらこの状況だったわけさ。

「キョンが精神的に疲れているというからね。心の浄化というかリフレッシュが必要だと思ってさ」
そうか、疲れているな、主に今とかな。

「リフレッシュ?ここでか?」
どんなリフレッシュをするというんだ?確かに絶叫マシンとかに乗って叫ぶとかは、ストレス解消にいいらしいがもうそろそろ日も落ちるころに乗ってもなぁ。

しかも隣はお前だろうが、逆に落ち着いてしまいそうだね。そもそもなんでこんなことを考え出したんだか。
「そうだよ、君のご母堂からも『息子をよろしく頼みますね』なんて言われていたからね。精神面のケアも必要だろ」
マイマザーよ、何を考えているんだ。第一なんで佐々木にそんなことを言うんだ、そして佐々木お前もそんなことに律儀に耳を貸して更には実行にうつさんでいい。

「俺の知らない所で何を暗躍しているんだか・・・」
「まぁ、いいじゃないか。君のご母堂もそれほどまで心配しているんだよ、自分の血を分け与えた息子だからね。ああ、見えてきたよ・・・ほら」



佐々木が指したのは、空中を悠々と1つ1つの個室が車輪上に1週30分ほどで回っているものだ。
「あれか?」
まぁそう観覧車だな、しかしまぁ。

「そうだよ、なんだいその意外そうな顔は?いつもは不良なような態度で授業を受けている生徒がコンビニ横の細い路地で子猫にミルクをあげている姿を見つけたときの女生徒のような感じは」
そりゃそうだろう。

クールビューティという言葉が少なくとも俺の生きてきたわずか15年生程度の女性観の中では間違いなくナンバーワンのお前から、エンターテェイメントの象徴である遊園地のお姫様というか象徴のような乗り物を指しているとは思わんさ。

「重要なのは観覧車じゃなくて、ゴンドラが一番頂上に来た時に見える素晴らしくビューティーな景色だよ」
「景色か?」
なんだ、景色を楽しむために観覧車に乗るのか、それならその辺の高い所にでも昇った方がいいんじゃないか。

「元々観覧車というのは、パリのエッフェル塔に対抗して作られたもので、1893年にアメリカのシカゴで作られたものなんだけど、今はほとんどが高い所から【展望】を楽しむために作られているからね。だから僕が景色を見るために観覧車に乗るというのは世間に即した行為だと思うけどね」

その観覧車は平日かつさらに夕方近くのせいもあってか、人はまったく持って並んでいない、
「お前がそんな風に言うぐらいだから、この観覧車から見える景色というのはさぞかしキレイなものということかな」
軽く茶化すような感じでいいながら、さっさと2人で観覧車に乗るためのチケットを買いに行くためにチケット売り場を探しながらそんな会話を続けているわけだが気のせいかな?

佐々木が少々不機嫌ではないが、どこかかしら不自然な感じがしないわけでもないね
「ねぇキョン。1つ聞いていいかい?」
「ああ、1つといわずに別に3つや5でもかまわんぞ」

たいてい1つといっても1つで終わらない場合がほとんどだと思うしな、そんな佐々木のちょい不機嫌ボイスを聞きながらチケット売り場のアルバイト店員に2人分の乗り物料金を払い、再び観覧車の元へと足を向ける。

表情がいつもお皿を割ったり、ドリンク類をこぼしているファミリーレストランの店員がまた同じようなドジをしてその姿を「またやったのか・・・」と見ている店長にように苦々しい顔になっている。なぁ俺何かしたか?

「君はまったく持って僕にどのような印象を持っているんだい?」
事件に出会って初めての被害者が出た後に、少しの証拠を元に思案している探偵のポーズを決めながらそんなことを言ってきた。


「どのような印象ってな・・・」
まぁクールビューティの代表的な存在で、何かと回りくどくて一般人の知識を持つ健全な学生では理解しがたい言語情報を延々と並べていて、さらに言えば心の温度が常に同じじゃないかな?

 って思うぐらいに物事に動揺しているとは思えないような表情を保ち、そのせいかな時々話している言葉と表情が合わないのに少々靄を感じるのは・・・まぁしかしだな。

「・・・こんなところだな」
さすがに思ったことはそのまま言わなかったが、なんとなく30メートル先の人間を見たら姿形がわかってあいつどんな名前だっけな?ぐらいに言葉をぼかして伝えては見たが

「ふぅ、適切でよくキョンの心情がわかる釈義をありがとう。まさか本当にそのまま予測どおりの応えが返ってくるとはね、キョンらしいといえばキョンらしい返礼だとは思うけど」

俺らしい返し方ね、そんなにわかりやすい返し方をしたかね。
「なんだそれは俺が単純で思考が読み易い人間だということか?」
やれやれだね、確かに純粋かもしれんが単純ではないと思うんだが・・・

「ふぅ・・・やっぱり所詮キョンだね、もういいからさっさと乗ろうか」
おいおい、なんだその『所詮』というのは、ものすごぉく失礼な気がするんだがな。

しかし何処かに反論は許しませんというか、何気なく部室に入っていったのはいいけど何故か先に来ていた先輩2人の不陰気が良くなくってしかも戻るわけには行かずに泣く泣くドアから一番近い席に座って気まずいながら一時間ほど見えない封鎖された空間の圧力を感じているんだが。

「ああ、そうだな」
そしてこういう時は短絡的で短い言葉で返事を終わらせるに限ると思うんだ。更に言えばだなこんな時が時々あるから佐々木はますますわからん、初めて会った頃はこんな不可視の圧力なんてものは感じなかったが、最近高校受験の模擬テストやらが近づくにつれてインビジブルパワーが増してきている、どうもこういったときの扱いがわからない。

「お2人ですか?」
「ええ」
女性アルバイターが観覧車チケットの提示を求めてきたので、さっさとチケットの半券を切ってもらって乗ることにした。
「ん?」
なんだ、不自然な具合に階段が一段だけ盛り上がっているというか、最後の観覧車に乗るための一段だけが幅が高くなっているぞ。

おかげでなかなか上がりにくいというか気づかなかったら下手したら足をかけて転んでしまうのではないかと思うのだが、業者のミスか、それとも建設するときの設計図にミスがあったのか、何しろこんなのをこのままにしとくのはどうかと思うんだがな。

と、後に思えば的外れなことを延々と考えていたわけだが、少なくとそんな的外れな考えを普通に飛ばしてくれるような出来事が起こった。
「んっ・・・・」
佐々木が俺に向けてか細いキレイな手を差し出してきたのだ。


う~ん、どうしたんだろうな。というか、なんだその手は?こんな僅かな階段を上れないほどお前の足は老いぼれていないと思うのだが。しかも何処かしら無機質な温度を保っている瞳で俺の目を見つめてくる。

しかしその割には目を離せないというか、目を離させてくれやしない純粋無垢な双眸を瞬きもしないので、なんだ・・・・その・・・・こっちが困る。

「・・・・・」
まぁこうしていてもしょうがないので、しかもおそらくやらないと動いてくれなさそうな雰囲気を出しているので――佐々木の手を掴んだ――あくまで佐々木が動いてくれなさそうだという理由なだけさ。

それになぁ、別に言い訳をするわけではないが、というか言い訳なんぞする必要は無いがな、佐々木の手を握ることなんて別にコレが初めてではないさ。ただ、シチュエーションが少々違うだけだ。
「うん、ありがとう」
佐々木の手は思ったよりか細い。割と女性的な手といえるだろう、というか女なんだけどな。

しかしこういうシチュエーションだと、不思議な感覚がするな。いかんな、気のせいか佐々木の脈拍が伝わってきているような幻覚症状に襲われている気がする。

いかんな・・・黒い服に身を包んだお嬢様につかえる執事のように先に佐々木をゆっくりと動いているゴンドラに乗せる――そっと、すっと手を離す――俺も問題ない足取りでさっさと乗る。お互い対面するような形で座ることになった。
「なぁ・「ああ、さっきのはね。」
いきなり言葉をさえぎられた。

「この観覧車はビューティフルというよりはヒーリングな景色で、しかもこのような夕方もやっているから必然的に恋人が多くなるんだよ。そのためあんな不自然な段差があると男性は女性をエスコートすることになり、イニシアチブを取ることに成功する。

したがって狭い空間で2人きりになる時はお互いの高感度が上がるとわけさ、わかったかい。世の中にはミスと思わせといて、実は言うとそれが何気なく巧妙な成功であるミス・・・と僕は考えている」
なんかいやに早口だった気がするな、ん?でもその話を聞くと・・・
「ああ、キョン勘違いを一切しないようにね。僕があそこで手を出したのは、本当に足首が痛かったんだ、だから少々力を貸してもらいたかっただけだからね。」

「あ~わかった、わかったからいい加減に俺も喋っていいかね?」
さっきから佐々木のマシンガントークを湧き出る湖のように連続で聞いているので喋らしてくれなどしないね。
「別にいつ喋ろうがそれはキョンの自由さ」
そうかな?なにかほとんど会話の主導権はお前が握っているようでならないんだが。

「で、足大丈夫なのか?」
「大丈夫、今ここに座ったら直った。完治して痛みなんて一切無い」
マシンガントークにさらに凄腕ガンマンの早撃ちのようなスピードで返答してきた。


「話の間」


そりゃ早い完治だな。まぁ治ったならいいさ、しかし何処かで足を痛めるとことなんてあったかな?1段目で少し足を踏み外したのかね。ちなみに位置関係は佐々木がゴンドラの外側に俺が内側にいる形となっている。

一体どのくらいの時間がかかるんだろうな、1周20分ぐらいか?あんまり遅く動いていると本当にゆりかごみたいに思えてきちまうからな。

「なぁ、佐々木お前の言っていた景色ってのはいったいどこの辺りで見れるんだ?」
一般的に考えれば頂上だとは思うが、2点3点あっても何の不思議ではないからな。

「そうだね・・・キョン寝てていいよ」
「・・・・寝る?」
何を言ってらっしゃるんですか?「寝てていいよ」いや、何故に。いい景色を見せてやるからついて来て、もといい半分ぐらい強制的な気もしたが、それで観覧車のってようやく動くのを感じ始めたら、「寝ていい」とはどういった了見かな。

「いや、その景色が見えるまでだいたい15分くらいなんだけど、瞬間的にその景色を見たほうが美しく、なによりも感動が強いのさ。それにキョン、君さそうとう眠たいだろう?」
「ああ、まぁな」

塾から帰ったら家で惰眠をひたすらにベッドという至極の楽園にて貪ろうと思っていたからな、怒涛のような濁流に飲み込まれていたせいで完全に忘れていたが、そういわれると眠たくなってきたな。

「そんな眠たくなった細い目で美しい景色を見ても脳にはいかないかもしれないだろう、ちゃんとその景色がきたら起こすさ」
くくくと軽く微笑しながらそんなことを言う。しかし本気で・・・

「まぁそうだなぁ、少し目を閉じるだけ・・・・」
流石に寝ちまうわけには行かんからな、目を閉じてそのビューティフルというよりはヒーリングな景色を楽しみにまっていようじゃないか、目を開けたら竜宮城っていうのは少々止めて欲しいけどな。そうさ、少し目を閉じるだけさ・・・。


「キョン・・・眠ったかい?」
多分眠ってしまったと思う、相当寝たそうだったから。
「キョン、本当に眠ったんだね。嘘をついていたらとんでもないことになってしまうかもよ」

でももう一度確認を取る。眠っている。私は知っている、キョンの寝顔は思ったよりもかわいい。塾でだいたい22時を過ぎると眠気が襲ってくるんだろうね、うつらうつらと、黄河を下る木船のようにゆったり眠りへとの旅路に身を任せている。

そしてその数分後、木船は沈んでしまう。そして、キョンが少しあどけないような、それでいてかわいらしい寝顔になる。今キョンがしている顔だ、間違えるはずもない。いつも見ているからね。

「ねぇ、あなたはなんでそんなに鈍いのかしら?」
私はとっても単純だ。キョンが眠ってしまったとわかったら、「僕」は「私」に戻ってしまう。

「演技」も「魔法」もそんなものさ、観客を、他人を騙しているんじゃない、自分を騙しているだけだから。でも、本当にキョンは鈍いなぁ、一応女の子が遊園地に誘ったんだよ?少しぐらいは何かしらの期待をしてくれても言いと思うけどな。
「でも・・・・」
自分の手をふと見る。・・・うれしかった。キョンとは何度も手を握ったことがあるけれど、それはいつも私からだし、それに今回とは違う意味。

今回の手を握ったのは「特別」。
気づくともう少しで頂上だ、少し長くキョンを見すぎていたようだ。私の後ろからオレンジ色の、まだ採掘されたばかりの天然石に光を当てたような光が舞い降りてくる。

キョンの顔がその光に照らし出される。そう私が・・・。
「ねぇ、キョン・・・キスしちゃうよ?」
少し身を起こせば届く距離。手を伸ばせば顔にふれる距離。わずかに近づくだけで短い息遣いが聞こえる。

手が自然に動いた、あなたの顔にふれる、トクトクとじかに感じる血の流動、ドクドクと私の胸でなる灼熱の血、体が動く、そしてあなたの顔が近づく、顔が熱い。
「キョン・・・・私・・・」


「キョン、キョンおきなよ・・・」
「ん・・・・・」
うん?ああ、しまったな。どうやら完全に寝ちまっていたようだな、しかしなんだ異様にまぶしいというか・・・。景色が真っ赤に染まっているというか・・・・。

「もうすぐだよ、早く目を覚ましたらどうだい?まさかココまで完全に寝てしまうとは僕も予想外だったから・・・」
ん、何がもうすぐなんだ?あ~佐々木か、そうだったな。

確か最高にキレイでなんでもアルファ波と小鳥や小川のさえずりを聞いたよりも癒しの効果があるような景色を観してくるているんだっけ、なにか記憶があやふやな気もするが・・・。

「キョン、しっかりしなよ。もうすぐ頂上なんだ、それはとても壮麗な景色が観れるんだからね」
わかったよ、だからそんな・・・なんでこんな目の前にこいついるんだ?ああ、俺がなかなか起きなかったらか?

「ああ、もう大丈夫・・・・」
少々、湖に浮かんでいるような気分とそれを覆いつくす森の霧のようにかすむ脳を起こしながらあいまいな返事を返す

「ほら、もう見えてくるからさ」
朝の目覚めのように目をこする、
「いったいどんな・・・・」
目の奥に、朱色に近いような山吹色の光が差す。それが朝の日差しのように目を刺激し脳に伝わる、徐々に目が覚めていく。

「ねぇ、キレイだろ?」
「ああ・・・・」
本当にキレイだった。まさかここまで極上の景色だとは思っていなかったな。

オレンジの光沢が地面に張り付いているようで、アスファルトが元からそんな配色だった錯覚すらも覚えるようにきれいに太陽光に色付けをされている。茜色の空は蛍火のようにわずかな点と点が、光り、光合い、そして結びつきあい、闇夜に光る血が煤けたような色合いが黒に溶け出す。

その一つ一つの光があでやかな羽を持った蝶のようにも見える。スパッタリングで金色の粉をグラディエーション化し、山吹色から黄金色のきれいなピラミッド的階層のような色分けに空と地上の間を隔てている。理想的な夕焼けの景色のようだ。

人間が完全に『美』を求めてCGやら美術作品を造形したらこのような色合いで景色になるんだろうな。

「どうだい、キョン?僕の自慢の景色さ、こんなにすばらしく壮大な景色なのにあまり人には知られていないしね。夕暮れの黄金色の草原で空中遊泳をしているみたいだろ?とっても気持ちいいんだ」

「ああ、同感だな」
まったく持って意外というか・・・
「よっとっ」
佐々木がちょんとフィギュアスケーターのようなアクセルで俺の横に座った。

「どうした?」
「こっちの方が綺麗に見えるんだ、いいだろ?」
佐々木の顔は鮮やかな紅色に包まれて恋に焦がれたような頬染めになっている。ふむ、こうしてみると可愛いもんだな。
「ああ、別にかまわんが・・・・」
「うん・・・・」





本当に綺麗でよかった、少しでも曇っていたり、空気が悪かったりしたら光の反射も屈折も起こんないからね。ねぇキョン、少しは感動してくれたかい?一応君の為に見せたものだからね、心にわずかに響く程度いいから感動してくれないと少し悲しいかな。うん?キョンにしたか?だって。くくく、それはね・・・。


もうそろそろ、ゴンドラの終着点が見えてくる。ようやく1週回り終わったな。しかし、佐々木の言うとおり癒される景色だったんだろうかな、乗った時よりわずかながらに体が軽い気がするね。

「キョン、無粋だとは思うが今回の景色、点数をつけるとしたら何点だった?」

何点?好みなんてそれぞれだし、なにより佐々木の言うとおりあのような素晴らしくてノートルダム大聖堂に飾られているルーベンスの絵ような神々しさと癒してきな感じを含めた景色に点数などとは少々無粋な気がする・・・・が、強いて点数というイデオロギー的なモノを考えるとすればだな。

「そうだな、88点かな」
「88?100点とは言わないが結構自身のあるというか己惚れても良い景色だった思ったんだが、せめて90点は超えて欲しかったね」
まぁたしかに、俺も100点に近い景色だと思った。

それどころか間違いなく100点越えの景色だったに違いないね、いわゆる120点って言うやつだな。しかしだな、景色だけじゃないんだ。
「佐々木よ、お前もまだまだだな。確かに景色は100点に近かったかもしれん。だがな、問題はシチュエーションだ」

つい、ニュース番組の解説者のように少々おかしなイントネーションで喋ってしまう。
「シチュエーション?」
きょとんと半分、何を言ってるんだいキョン。と語尾につきそうな顔で聞き返してくる。

「ああ、せっかくだからこのような場所は恋人同士もしくはそれに該当するような奴と行きたいとは思わないか?その分だけマイナスだな」
まぁ、景色っていうのはその時の雰囲気というかだな、そういうのも大切だとは思うんだ。

「ふーん、そうかい」
なんだ?その微妙な殺気というか、本当に後ろから立ちのぼせるようなオーラは!

「ふーん、そうかい」
確かに私はね、キョンの前とかでは《僕》って言ったりして女の子ぽっくないかもしれないけどさぁ、そんないい方しなくてもいいんじゃないかな。仮にも目の前にいる女の子に向けてさ、ちょっと知ったかぶりの先輩みたいに淡々と言われるとなんか・・・・もう。

「佐々木もうそろそろ降りるぞ」
もうそんな時間か、本当はもっといい雰囲気になるはずだったんだけどな。やっぱもうちょっと攻めなくちゃだめなのかなぁ、こう可愛い服を着てもっと短いスカートを履いたりして――「ねぇ、キョン♪かわぁいいかな?」――無理・・・ううん、違う!キョンがありえないぐらい鈍いのがいけないんだ、そうだよ、そうにきまっている。

「おい、何やっているんだ?」
「え?」
目の前から声は聞こえなかった。代わりに顔を横に向けたら少々あきれたような、それでいて、困ったような顔をした観覧車専用のアルバイトがゴンドラのドアを押さえていた。そして、その後ろには「やれやれ」とおなじみのリアクションでキョンがため息をつきそうな勢いで立っていた。

「すいません」
考え事をしていたらもう終わっていたみたい、ちょっとぐらい声をかけてくれてもいいとはおもうんだけどな。私のほうがキョンみたいにため息をつきたくなるような思いでゴンドラを降りる。この時に私はすっかりと忘れていた、大切なことを。

早々とキョンが歩き出していたので私も急いでついていこうと思い・・・

「ほらよ」

wolfram.guitar.31.623954180.2.mid

手を差し伸べられた

「え?」

「下、気をつけろよ」
自分で言っておいてすっかり忘れてしまっていた。

この必然的に不自然な階段を。

「あ、ああ」
声が上ずっていたのだと思う。脈拍が増加したのだと思う。発汗量が上がったのだと思う。体温が上昇したのだと思う。

――ドキドキと、鼓動が止まらなかったから――

そのふれる指が愛おしくて、体のバランスを崩してしまって飛び込みたい気もしたけど。
だからこそギュッと掴んで

「離さないでくれよ」

「私」にならないようにガラスの仮面を被って、その代償か喋る声はこもってしまっていて。赤銅のような光線に包まれていた景色で彼の顔は見えてはいなかったけれど。変わりにオレンジ色の暖かい優しさだけがハッキリと見えたから。

「わかってるさ、足をくじかれちゃたまらんからな」

この一瞬が幸せな時間だった。

だから微笑がこぼれた。




~fin~


S/Story

え?あ、そうだったね。あの時もう頂上が目の前だったからね、お預けをくらっちゃったよ。うん、そのまましようと思えばできたんだけどね。あの時心では「私」だったけど、キョンにとっては「僕」だった。だから僕が「私」で、私としてちゃんと気持ちを伝えられるよう、その時まで・・・・。
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